J3昇格を目指し、奈良の地で戦う27人の選手たち。
「何故、サッカーなのか」「何故、奈良なのか」選手それぞれの“物語”に迫る。
(ホームゲーム週に更新予定)
#31 藤吉 皆二朗
昨年チームの年間MVP「鹿男賞」にも選ばれた、
奈良クラブの頼れる守護神、藤吉。
しかし今に到るまでには壮絶なストーリーが。
今回はその藤吉のストーリーに迫る。
GKからFWまでこなしていた幼少期
ㅤサッカーを始めたきっかけは、幼稚園のクラブ活動にサッカーがあったことでした。その時の一個上のGKの先輩がかっこ良くて。キーパーグローブもかっこ良く見えたんですよね。その先輩にグローブを借りながらキーパーを始めました。
ㅤ小学校2年生までそのクラブに所属していたんですけど、クラブを変えて。その時にキーパーも辞めてフィールドをやるようになりました。FWからボランチまで、色々やりましたよ。
ㅤでもなぜかPKの時だけはキーパーを任されていて(笑)。フィールドプレーヤーとして選抜を受けたのに、キーパーで受かったりとかね。人が足りなければFWとか。色々なポジションを経験した方だと思います。
一時は編入を考えたことも
ㅤ高校では、正直あまりサッカーを本気でやる気はなかったんです。周りと同じく、勉強をして高校に入学しました。サッカー部には入りましたが、空気感が自分には合わなくて。唯一心の救いだったのがGKの先輩とは息が合っていたことでした。それでも長く続けるのは難しくて、尊敬していた先輩が部活を辞めてしまった時に、自分もサッカー部を辞めることを決意しました。
ㅤでもサッカーがしたかった僕は、高校を編入することを考えました。実際に他校に練習参加もしましたよ。そしてクラブチームの横河武蔵野FC(現:東京武蔵野シティFC)ユースに合格しました。
3歳下と練習、骨折、ミス連発。心折れる日々。
ㅤセレクションに受かった喜びは束の間、全く通用しなくて。高校2年生で中学2年生の試合に出るくらい。少し調子が上がってきた頃に今度は手の指を骨折。復帰をしたと思ったらミスを連発。自分のせいで試合に負けていた自覚がありますし、今思うと良く乗り切れたなと思います。
苦しい日々を乗り越えて試合に出場
ㅤ高校3年生からようやく試合に出れるようになって。横河武蔵野FCのトップチームの練習に出るようになりました。高校の授業が終わると移動してユースに練習に出て、終わってからトップチームの練習に出て。毎日5時間くらい練習する日々でした。
自身の得点で全国へ
ㅤ日本クラブユース選手権大会が思い出に残っています。関東はJリーグの育成チームが多く、熾烈な戦いなんですよ。9位まで全国大会に出場できるんですけど、9位を横河武蔵野FC、ジェフ千葉、浦和レッズ、大宮アルディージャで競うことになって。浦和に勝利したら全国大会が決まる試合で、延長、PKまでいき、僕がPKを決めて勝ちました(笑)。
初めて“プロ”を意識
ㅤ横河武蔵野FCのトップチームがJFLシードで天皇杯の2回戦に出場して、1回戦に大分トリニータと試合をした時に僕もメンバーに入っていて。相手メンバーも現在J1で主力の選手が多く、会場の雰囲気も地響きが鳴っているくらいすごくて。僕は試合には出ていないですけど、その雰囲気を感じて「プロになりたい」と思いました。試合は延長でPKまで行って。大分のGKがPKを止めたんですよ。やっぱりプロは止めるんだなって感動して。今じゃできないですけど、試合後に相手チームのロッカーに行ってユニフォームもらいに行くくらい、僕の人生を変えた一日でした。
ㅤ高校2年でチームを変える決断をしていなければ、今の自分はサッカーをしていなかったと思います。
愛情を持った指導
ㅤサッカーが中心の生活が送れるようになって、奈良クラブに来て良かったと思っています。平日の午後は小学生にゴールキーパーコーチとして教えているんですけど、子ども達は素直で可愛くて。ゴールキーパースクールの子ども達には、時に楽しく、厳しく指導しています。少し厳しい方が多いかもしれませんね。一緒に指導しているコーチに「厳しすぎちゃう?」と心配されますが(笑)。でもそれが僕の愛情だと伝わって欲しいです。
試合前はゴールに挨拶を
ㅤ僕は人と話すことが好きなので、年齢とか経歴問わずに選手みんなと話します。この選手は今何を考えているかな、とか、ルーティーンとか、結構覚えてたりしますよ。僕はキーパーグローブを右手からつけるようにしています。あとは試合の時にゴールポストに挨拶をして、ゴール横に置いてあるボトルとかをできるだけ遠ざけたりとか。目標物があるとシュートが打ちやすくなってしまう気がしてね。
安全御守りに秘める想い
ㅤ先日発売された御守りは僕が前に所属していたチームが発売していたもので、奈良クラブでも実現化させていただきました。僕を含むGK3人の使わなくなったキーパーグローブが入っています。商品名のままで、僕たちGKがあなたの安全を守ります、という商品です。この商品の御利益を期待していただけるよう、プレーで示します!今シーズンも残り10試合。最後まで一緒に戦いましょう!!