コラム

2020シーズンポスター制作意図について

2020シーズン開幕を迎えるにあたり、今年もシーズン開幕ポスターを制作いたしました。

制作を担当いただきましたクリエイティブチーム合同会社オフィスキャンプ様(以下、オフィスキャンプ様)へのインタビューを交えてポスター制作の意図を公開いたします。

 

2020シーズン開幕ポスター制作にあたり

はじめに、今年はクラブとして信頼回復に取り組む1年だと認識しており、ファン・サポーター、パートナー企業、自治体の皆さまをはじめとする奈良クラブと何らか関わりを持っていただいている方々を中心に考えたポスターであるべきだと考えました。
さらに、シーズン開幕ポスターの役割についても今一度考え直し、2020シーズン開幕ポスターに持たせる役割は大きく、下記の3つとしました。
  ①奈良クラブを知っている方が応援したくなる
  ②奈良クラブを知らない方の興味を引く
  ③興味を持っていただいた方がスタジアムに足を運ぶ導線作り
この3つの役割を果たすため、今年は以下の2パターンで制作することとなりました。

 

【パターンA】
見た人の目を引くデザインであると同時に、クラブとしての意思を表明しつつ、ピッチの温度感を伝えられるものであることを目指す。
【パターンB】
パターンAで興味を持っていただいた方が、行動を起こせるような導線作りとして、スタジアム来場に必要な情報の整理を行う。

 

パターンAは、昨年も奈良クラブのグッズデザインやグラフィックを担当いただいたオフィスキャンプ様に依頼し、パターンBはオフィスキャンプ様にご相談させていただきながら社内で制作を行いました。

ポスター完成までの流れをサポーターの皆さまにもご共有させていただきたく、ここからは、パターンAを実際に制作いただきました坂本大祐様、勝山浩二様(共にオフィスキャンプ様所属)との対談の様子を交えながら2020シーズン開幕ポスターに込められた意図をご紹介させていただきます。

今回ご担当いただいた坂本さん(写真左)と勝山さん(写真右)

インタビュー

>chapter1. はじめに

Q.依頼を受けていただいた理由

坂本「ポスター制作の依頼をいただいた時、今年は奈良クラブにとって正念場となるシーズンになると思っていたので、出来る範囲で協力しますと伝えました。僕たちと奈良クラブは同じ“奈良”にある企業ですし、ここに至るまでの経緯を知っています。また、ポスターの素材として集合写真を使いたいと聞いたとき、撮影も弊社が担当していましたので、その写真を使うのであればうちが制作したほうが良いなと思い引き受けました」

 

Q.奈良クラブとの関係性について

坂本「奈良クラブと関わり始めたのは奈良クラブが株式会社化する前の2017年頃でした。奈良フットボールクラブではなく、奈良クラブと名乗り、“奈良全体を盛り上げる”という理念に共感したのが関わるきっかけでした。そして昨年の株式会社化するタイミングでは、グッズのデザインにも深く関わったり更に密接な関係になっていきました」


>chapter2. 制作意図/コンセプト

Q.最初のオリエンテーション時の率直な印象

坂本「入稿までの期限がとてもタイトで、開幕も近づいている中で、まずは早く形にしないといけない、という想いが強かったですね。あと、役割を分けてポスターを2種類制作すること自体は良いことだと思いました」

勝山「本来ならば2パターンとも制作を担当させていただきたいところでしたが、監修をきちんとすることを条件にパターンBの制作は、スケジュール優先でクラブ側で制作したいという意向を汲む形になりました」

坂本「地方のクリエイティブの案件って良くも悪くも一蓮托生で。もちろん、べき論なこだわりもありますけれど、相手の状況や置かれている環境などの事情を勘案した上でまずはきちんと形にしなければならない。いわば運命共同体のようなもので、“クリエイティブのプライド”のようなものに逃げられないんですよね」

 

Q.メインのコピー GO FOR IT を採用した理由

勝山「まず、ピッチの温度感を伝えるというオリエンテーションがありましたが、2020シーズンの奈良クラブの状況について鑑みない、サッカーだけにフォーカスしたようなメッセージでは不十分だと考えました。現状を鑑みた上でのクラブとしての決意表明と、ピッチの温度感を伝える。これらを1枚のポスターで両立できる言葉が必要だと思い、頭を悩ませた結果出たのが、“GO FOR IT”でした。シンプルな言葉ですが、“目指すべきもの”があって、そこに到達する過程に全力を尽くすという意味が込められいます。ピッチの選手達をはじめ、クラブを支える人たちが一丸となって前に進んでいくという決意を表現しています」

 

Q.試合で使われる言葉を羅列するデザインにした理由

勝山「試合で飛び交う言葉を羅列することで、ピッチの上の温度感を伝える表現にできればと考えました。また、このデザイン自体が目立つので、目を引くことができると考えたのと、奈良クラブに関心がある人は知らない言葉があった場合、“これはどういう意味なんだろう?”と思うじゃないですか。その意味を調べてみるという入り口があっても良いのではないかと思っています。ポスターを街中で見つけた時に、ぜひこれらの言葉にも注目してもらって、気になるものがあれば意味を調べてもらえると嬉しいですね」

 

Q.制作過程で頭を悩ませたところ

勝山「今回は先に撮影していた集合写真を使うことが前提だったので、素材から先に構成を考えるのは少し悩みましたね。あとは、途中で奈良クラブさんには相談させていただいたのですが、ポスターの市松文様と実際のユニフォームの市松文様のサイズを同じにできたらより現実味が増して面白いな、と思ったんです。縮尺とバランスの関係で今回は断念してしまいましたが、また機会があったら何かのクリエイティブでやりたいと思っています」

 

Q.その他注目いただきたいところ

勝山「集合写真のところで、空が少しだけ映っているのですが、この写真を撮影した日は天気が悪くて。でもやっぱり青空に見せたいので空は合成してあります」

坂本「え、知らなかった。そうだったの?」

勝山「はい。あと、集合写真のところは、3列目の選手の輪郭をトリミングしているのですが、ジャーメイン選手の頭は輪郭がはっきりしていてとても切り取りやすかったですね(笑)昨年は向選手の髪の毛のトリミングに膨大な時間がかかっていたので(笑)」

 

>chapter3. ポスターに込めた願い

Q.ポスターに願いを込めるなら

勝山「奈良クラブとしてのメッセージを正しく届けたいという気持ちと、アイキャッチとなるデザインにすることで、出来るだけ観戦へのハードルを低くしたいな、と思いながら制作しました。願いを込めるなら、関係者の方々が奈良クラブを応援したいと思ってもらえることと、サッカーを知らない方たちがこのポスターを街中で見て興味を持っていただけたら嬉しいです」

 

Q.奈良クラブ2020シーズンに対する想いなど

坂本「クラブの状況を鑑みると、正直今年は順風満帆な船出ではないとは思います。我々の仕事でもそうですが、これはきついな…という状況に正面切って向かって苦しんだ末に成長があると思うんです。苦境の中にあってもできることをやり、前を向いて進んでいくことが、クラブとしての成長につながると思います。今は苦しい中だと思いますが、まさに“GO FOR IT”の姿勢で、この1年はアクセル全開で踏み切って進んで欲しいと思います。共に頑張りましょう 」

オフィスキャンプ東吉野(東吉野村のコワーキングオフィス)前にて *左から勝山さん 坂本さん 大里(ポスター制作担当)

 

 

 

2020シーズン開幕ポスター

 

坂本さん、勝山さん、本当にありがとうございました。
思いのこもった最高のポスターができました。
ぜひ、街中でふたつのポスターを探してみてください。

 

制作者プロフィール

◇坂本大祐
1975年生まれ 大阪府大阪狭山市出身
都市部で働いていたところ、身体を壊したのを機に、山村留学で中学生の頃に暮らした東吉野村へ移住。村に在住し、商品や店舗のデザインなどを手がけ活躍中。生活は正反対になったが、自分にしかできない仕事へとシフトできた今の生活が気に入っている。現在は県・村・移住したクリエイター陣とタッグを組んでつくった「OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO」を運営中。

◇勝山浩二
1986年生まれ 大阪市出身
グラフィックを軸にした広告デザインやWEB、プロダクト、企業ブランディングなどを手がける。地域プロジェクトや企業ブランディングを手がけるデザイン事務所を経て、現在は奈良県奥大和地域にフィールドを移しローカルデザイナーとして活動。

オフィスキャンプ東吉野
奈良県吉野郡東吉野村小川610-2

「遊ぶように働く」山村のシェアオフィス
大阪から車で約1時間半、奈良県の東部地域にある東吉野村に、シェアオフィスができました。急峻な山あいをながれる清流のすぐそばに、築70年の民家をリノベートしてできた当施設は「オフィスキャンプ東吉野」といいます。wifi環境や、プリンタ複合機のほかに、コーヒースタンドや展示室も用意しています。週末に、家族や友人とキャンプするのも良いですが、オフィスをまるごとキャンプしてみませんか?コーヒースタンドや展示室のみのご利用も大歓迎です。